角田光代「八日目の蟬」
前半は、愛人の子どもを誘拐した女性主体の話。
後半は、誘拐された子どもが主体の話。となっています。
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ずっと前に映画化されていたためか、題名だけは知っていました。
まだ読んだことがなかったので、なんとなく手に取って、借りた本でした。(その後、購入しました。)
感動しました。
本当はいけないことですが、誘拐した女性と誘拐された子どもが、本当の親子だったら良かったのに…と何度も思いました。
誘拐犯の女性は、捜査の手から必死に逃げつつも、子どものことを本当に大切にしていました。それに、子どもにとっては、誘拐犯でなく、その女性が自分の母親なんです。お金はなくても愛情をたくさん与えてくれたお母さんだったんです。
しかし、もし誘拐されたのが私自身の子どもだったら…
生まれてきた子どもの一番純粋で可愛らしい時期、一緒に過ごせるはずだったかけがえのない時間を奪われたことを許すことはできないでしょう。
そして、誘拐犯から本当の両親の元に返された子どもの心…
母親だと思っていた人から引き離され、急に現れた知らない人達と暮らすことになります。恐怖しかないと思います。それに、誘拐犯との生活とは真逆の環境。お金はあっても愛情は感じられないような生活。
年を重ねるごとに自分の立場が分かってきて、悩み苦しみます。なんの罪もない子どもを特別な子にしてしまったことが一番の罪だと思いました。
夢中で読めます。
出会えて良かった一冊です。