江國香織「神様のボート」
必ず戻ると言っていなくなった彼を待ちながら、引っ越しを繰り返す、母と娘。あの人のいない場所にはなじむわけにはいかない…という考えに囚われている母の葉子と、成長していく娘の草子の物語。
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静かな物語です。
静かなんですが、狂気を感じます。
母親が過去の男性の言葉を心から信じており、色々な場所を転々とさまようのに対し、
娘は成長するにつれて、母親のような不安定な生活ではなく、地に足を付けた生活を望むようになります。
なんだか母親は現実を生きていないような気がしました。
そして娘は自分の足で歩き出した。現実を生きるために。
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物語の中の描写がきれいで、文章も心地よく、また読みたいと思える本でした。